有効性試験
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自然免疫活性作用試験
・シルクワームの頭部を切断し、尾側におもりをつけ体長が安定化した後に、試験溶液を投与し、投与直後からの筋肉収縮で発生する体長変化を測定します。
【自然免疫活性化によるカイコ筋収縮の機構】
免疫担当細胞の受容体に自然免疫活性化物質が結合すると活性酸素種が放出され、セリンプロテアーゼに作用し麻痺ペプチド(BmPP)が活性化し、筋収縮が起こります。
参考文献
Ishii, K., Hamamoto, H., Kamimura, M. and Sekimizu, K. (2008) Activation of the silkworm cytokine by bacterial and fungal cell wall components via a reactive oxygen species-triggered mechanism. J. Biol. Chem., 283, 2185-2191.
※自然免疫活性作用試験は、株式会社ゲノム創薬研究所からの委託試験として実施致します。 -
血糖降下作用試験
・グルコース含有餌を摂取したシルクワームの血管内に試験溶液を投与し、投与後6時間絶食後のシルクワーム腹脚より血液を採取し、血糖値を測定します。
【血糖降下作用物質の探索】
餌にグルコースを混ぜてシルクワームに与えると血糖値が上昇しますが、ヒトのインシュリンを投与することによって降下します。このシルクワーム糖尿病(高血糖)モ
デルを用いて、血糖降下作用物質の探索が可能です。
参考文献
Matsumoto Y, Sumiya E, Sugita T, Sekimizu K. An invertebrate hyperglycemic model for identification of anti-diabetic drugs. PLoS ONE 30;6(3):e18292 (2011) -
Ⅱ型糖尿病抑制作用試験
・18時間グルコース含有餌摂取後のシルクワームの血管内に試験溶液を投与し、投与後24時間絶食後のシルクワーム腹脚より血液を採取し、血糖値を測定します。
【Ⅱ型糖尿病治療薬の探索】
シルクワームの高血糖状態は、日本人に多いⅡ型糖尿病の薬であるメトホルミンによっても改善されます。
参考文献
Matsumoto Y, Sumiya E, Sugita T, Sekimizu K. An invertebrate hyperglycemic model for identification of anti-diabetic drugs. PLoS ONE 30;6(3):e18292 (2011) -
微生物感染抑制試験
・メチシリン感受性黄色ブドウ球菌の10倍希釈菌液をシルクワーム血管内に投与し、24時間後のシルクワームの生死を判定し、生存曲線からED50を求めます。
【細菌感染モデル】
シルクワームの細菌感染モデルにおいて、ヒトの臨床で用いられている抗生物質を十分量用いれば,治療効果が得られます。50%のシルクワームを生存させる抗生物質の
シルクワーム体重あたりの量を、ED50として求めることができます。
ED50を種々の抗生物質について、シルクワームとマウスで比較すると、よく一致するという結果が得られており、このことは、マウスなどの哺乳動物を使わずとも、シルクワームを用いれば、抗生物質の治療可能性を推測することができることを意味しています。
参考文献
Kaito, C., Akimitsu, N., Watanabe, H., Sekimizu, K. (2002) Silkworm larvae as an animal model of bacterial infection pathogenic to humans. Microb. Pathog., 32, 183-190.
Hamamoto, H., Kurokawa, K., Kaito, C., Kamura, K., Manitra Razanajatovo, I., Kusuhara, H., Santa, T., Sekimizu, K. (2004) Quantitative evaluation of the therapeutic effects of antibiotics using silkworms infected with human pathogenic microorganisms. Antimicrob. Agents Chemother, 48, 774-779.
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肝機能障害抑制試験
・オリーブオイルで希釈した四塩化炭素をシルクワーム血管内に投与し、投与24時間後にシルクワーム腹脚より血液を採取し、ALT活性を測定します。
【四塩化炭素による肝障害】
四塩化炭素をシルクワームに投与すると、哺乳動物と同じく、ALT (アラニン・アミノトランスフェラーゼ) (別名 GPT) の血中濃度が上昇します。
哺乳動物ではALT は肝臓に存在しますが、シルクワームでは薬物代謝の場である脂肪体や腸管に存在しますので、シルクワームにおける血中ALT濃度の上昇は、これらの組織や器官が損傷を受けたことが考えられます。 哺乳動物では、四塩化炭素は肝臓の P450 によって分解され、その際に産生されるトリクロロメチルラジカル (CCl3・) が肝細胞に損傷を与え、ALT が血中に放出されます。シルクワームに抗酸化剤 NALC ( N -Acetyl L-cysteine) を投与するとALTが低下しますので、シルクワームでもヒトと同じ機構で肝障害が起こることが考えられます。
参考文献
Inagaki Y, Matsumoto Y, Kataoka K, Matsuhashi N, Sekimizu K. Evaluation of drug-induced tissue injury by measuring alanine aminotransferase (ALT) activity in silkworm hemolymph. BMC Pharmacol Toxicol.8;13(1):13 (2012)
引用データ:株式会社ゲノム創薬研究所 受託試験パンフレット http://genome-pharm.jp/docs/parameter_05.pdf